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PHILOSOPHY

「おいしい」を超えた感動を届けるために

私たちは「おいしい」を通じて、その先にある「感動体験」をしてもらうために、何が大事なのかを日々考え続けています。

人はどういう時に感動するのか。

例えば、山登りをして山頂で食べるカップラーメンは自宅で食べるときよりも格段においしいはずです。それは、山頂まで登った達成感と疲労感、見晴らしの良い山頂で食べるというシチュエーションによりおいしさの感動がより増幅されているのだと思います。

私たちは、ただの「おいしい」だけではなく、お客さまの想像をはるかに超えた「感動」を体験してもらうために考えたロジックや方程式で、喜んでいただけるお店作りを目指しています。長年レストランを運営しながら試行錯誤を繰り返し、導き出したロジックである「感動の方程式」の一部をご紹介します。

五味+1

まずは料理で一番大切な味。私たちのレストランは基本的にはレシピが存在しません。「おいしい」のゴールイメージを設定し、そこから逆算して設計するようにしています。

その「おいしい」を設計する上で大事にしているロジックのひとつが「五味+1」です。五味とは、旨味・塩味・甘味・酸味・苦味という要素のことです。私たちはそこに+1を加えることでオリジナルのおいしいの概念を作り出しています。ここでいう+1は、食感や香り、辛さなどの刺激を表し、これらをひとつ、または複数加えることによって味に奥行きや深みをつくり出すことができるという考え方です。

ここで、過去にsioのコースの一品として提供していた料理で説明します。

このように一皿で五味+1を構成する複雑な構成の料理もあれば、複数の料理や飲み物で構成することもあります。例えば、塩味と旨味で構成されたフライドポテトにビールやレモンサワーの苦味を合わせることで口の中で五味をつくり、「おいしい」を感じてもらうこともできます。

お客さまに感じてもらえる「感動」のポイントがあるとしたら、一つのお皿だけで表現するのではなく、コース料理や複数の料理での要素、さらにお店の世界観などトータルで体感してもらうためのイメージをつくることを大事にしています。

抑揚のあるコース料理

コース料理とアラカルトでは感動するポイントが違うと思いますが、ここではコース料理の設計についてご紹介します。私たちのレストランでは、sioとHotel’s、NAGANOはコース主体のお料理を提供しています。大事にしているポイントは、コース全体を1本の映画のようなドラマチックで抑揚のあるストーリー仕立てに組み立てていることです。ここではコース全体の設計をドラマカーブを描いた図で説明します。

コースのストーリーは1品目を提供する前から始まります。まずは、触り心地がとても良いIKEUCHI ORGANICのおしぼりで手を拭いてもらい期待値を高めてもらいます。1品目のスープはあえて薄味のシンプルなものをお出しし、一度ここで期待値を下げます。その後に2・3・4皿と続く第1のピークに五味+1の情報量の多いお皿をお出しすることで、一度下がったテンションを大きく上げることで感動の振り幅を大きくしているのです。ずっとハイテンションな料理が続くとお客さまは疲れてしまうので、次の皿で少し落ち着かせて一息をつかせ、続く6・7・8皿目でパスタ、魚料理、肉料理とコースのクライマックスに繋げていきます。

コース料理は、全てを平均点でおいしい料理にするのではなく、あえて高低差をつけることでさらに深い感動をしてもらうよう設計しています。ぜひ、ご来店した際にはドラマカーブを思い出して召し上がっていただくと納得していただけると思います。

おいしいは気持ちよさ

コースの設計の説明で、最初にお出しているおしぼりについてふれましたが、私たちはおいしい料理よりも気持ちのいい料理、気持ちのいいレストランをつくることを意識しています。ここでいう気持ちよさとは、お料理を味わうための味覚はもちろんのこと、視覚・触覚・嗅覚・触覚の五感全てで感じてもらう感覚のことです。この気持ちよさを感じもらうことが「感動体験」につながると考えています。

ここでは、料理以外で感動してもらうためのポイントをご紹介します。

sioでは、THE GLASSのコップでお水をお出ししています。このコップは、唇の接触面が滑らかで気持ち良く、飲んだときにお水をおいしく感じてもらえると思います。

IKEUCHI ORGANICのおしぼりは、着席した時にお水と一緒に提供します。このおしぼりで手を拭いて10秒くらい乾かすと、とてもスベスベになります。毎回自分たちで手洗いしながら育てていくことで、とても肌触りの良い質感のおしぼりになっています。

メインのお肉料理の際にお出しする、テーブルナイフは研ぎ師さんに頻繁に研いでもらっています。ですのでとても良く切れます。実際に切っていただくとその切れ味の良さに感動していただけると思います。

Hotel’sやNAGANOで使っている椅子は広島にある家具メーカーの「マルニ木工」のもの。座ったときに胃が圧迫しないような設計がされており、満腹になっても苦しくなく、とても座り心地の良い椅子です。

音楽やアートも空間をつくる大事な要素のひとつとして考えています。BGMはプロのDJ・ミュージシャンにセレクトしていただき、コースの構成に合わせるようにスタートから終わりまでドラマのようにストーリーのある選曲をしてもらっています。

まだまだ語りたい点はたくさんありますが、お客さまに気持ちいいと感じていただけるポイントをお客様の目線に立って考えぬくことで、さらに感動していただけるお店づくりを日々行っています。

必要なのは「愛と想像力」。

感動してもらうために大事なことは、まずは相手を理解すること。そのためにはしっかりと相手を観察し、理解するための解像度を高めることだと思っています。

私たちがお客さまを魅了し、感動してもらうことでファンになっていただき、その感動体験の輪を自然と広げていけるよう、日々努力し続けていきます。

これからもsioグループのレストランをよろしくお願いいたします。